捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す〜小姓になったら王子殿下がやたらと甘いのですが?
水面が淡く光り輝くと、小さな子どものような妖精たちがふわふわと飛んでくる。
“おいで、おいでよ”
“夢の国は、楽しいよ”
“みんな、幸せ……苦しみも悲しみもないよ”
「なんだい、この羽虫は!?」
「ピッツァさん!」
ピッツァさんが刃を振るうと、すぐにかき消えてまた現れる。そして、こちらへ手招きしてきた。
“おいで、おいでよ”
“ミリュエールだけいらっしゃい”
“他の人間はいらないわ…!!”
妖精達の目が紅く光ったかと思うと、突然白い蛇に変化して急激に巨大化していく。あっという間にわたしの腕に絡みついたかと思うと、ググッと引っ張られ引き寄せられ始めた。
「ミリィ!」
ピッツァさんがすぐさま剣で絡みついたヘビを断ち切ってくれる。けれども、すぐさま再生して再びわたしにからみつく。わたしも短剣で斬るけれども、無駄だった。
しかも、切れば切るほどより強靭にわたしに絡みつき締め上げられる。
「ヒヒヒーン!」
アクアもどこかが絡みつかれたのか、もがくように跳ね始めた。必死にアクアの首にしがみつくので精一杯だ。
(落馬する……!これなの?ソニア妃が落馬した原因は?)
「ミリィ!クソッ……!!」
ピッツァさんも懸命に刃を振り続けるけれど、沢から無限に湧く白蛇相手に苦戦する。やがて彼女の足や腕も白蛇に絡み取られ、ギリギリと締めつけられ始めた。