捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す〜小姓になったら王子殿下がやたらと甘いのですが?
「ぐあああっ!」
「ピッツァさん!!」
ミシミシ、と不自然な音を立ててピッツァさんが締め上げられる。
わたしも必死に踏ん張っていたけれども、もはやあと僅かのところで沢の中に引き込まれそうだった。
「アスターク、やめて!!そんなことするなら、もう会わないよ!」
わたしがそう叫んだ一瞬、ピタッと白蛇の動きが止まった。
そしてーー。
ヒュンヒュン、と空を切る鋭い音が聞こえると、わたしとピッツァさんに絡んでいた白蛇が斬られ、完全にバラバラになって落下した。
まるで、一陣の風が吹いたようだった。
次々と湧き出す白蛇をものともせず、すべて斬り捨てる。
斬られた白蛇は再生することなく、霧に溶けて消えた。
「大丈夫か、ミリィ?遅くなってすまなかった」
プレートアーマー姿のアスター王子は、面頬を上げて抱き上げたわたしを心配してくださった。
「はい、ありがとうございます。助かりました。あ、それよりピッツァさんを!」
ピッツァさんはわたしよりひどく締め上げられてた。心配になって駆け寄ると、彼女は「にがーい」と渋い顔をしていた。
「大丈夫だよ。アスターからカツレ草をもらったから。一発で回復さ。そもそも、アタシはそんなにやわじゃないからね!アハハハ!」
快活に笑う彼女はまったくいつもどおりで、ほっとした。