捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す〜小姓になったら王子殿下がやたらと甘いのですが?
「ピッツァ、ミリィを護ってくれてありがとうな」
「なに水くさいこと言ってんだ!アタシたちは仲間。今さらだろ?」
バンバン、と背中を叩かれたアスター王子は咳き込んでるけれども。プレートアーマーを貫通するピッツァさんの力って一体……。
“……なんで?”
ホタルのような光が、ふわふわと泉から湧き出す。それはわたし達の周りにまで、無数に飛んできた。
“アスターは、どこまでぼくの邪魔をするの?ぼくには母様とミリュエールだけいればいい……だから。邪魔をする人間を殺そうと思ったのに。なんで邪魔をするの?”
それは、アスタークの声だった。
「え、アスターク…それはどういう……うわっ!」
「ミリィ!!」
ブワッと泉から強い風が巻き起こり、アスター王子がとっさにわたしを抱きしめる。ふわっと一瞬浮遊感を感じたあと、綿にでも降りたようにスポンと軽く着地した。
「……ここは!」
空が白んだような穏やかな色で、周囲は常春の美しい景色。暑くも寒くもなく、快適な気候。木はたわわに実らせ、四季関係なく花が咲き誇る。
「間違いないです。わたしが夢で見た場所……おそらく夢の国でしょう」
「へぇ、ここがかい。皆、無事でよかったな」
「ピッツァさんも、無事でよかったです」
わたしとアスター王子の他にも、ピッツァさんとアクアがきちんと着いてこられホッとした。
ただ、鎧や剣なんかの武装はほとんど消えて短剣くらいしか残ってない。