捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す〜小姓になったら王子殿下がやたらと甘いのですが?
「……にしても、さっきの声。邪魔なやつを殺そうって物騒なこと言ってたな。アスター、もしかして別行動した理由はそれかい?」
ピッツァさんの疑問に、アスター王子は頷いた。
「ああ、狩猟地全体の結界を張るのに少々手間取り、眠りの霧までは防げなかったが……いのちを奪う呪いは防げた。ことに、国王陛下の瘴気がひどく祓うのに時間がかかってな」
そうか、と納得がいった。アスター王子が話を聞いてからずっと単独行動だった理由。それほど大規模な結界……魔術に疎いわたしにはわからないけれども、きっとすごいことなんだ。
「アスター殿下……ありがとうございます、皆を護ってくださって。ぼくだけではどうしようもありませんでした」
「いや、騎士ならば当然のことだ」
「不思議なことに、アスター殿下がかっこよく見えます」
わたしがそう言うと、アスター王子は急に胸を張って偉そうだ。
「ごほん…と、当然オレはいつだってカッコいいぞ」
「えー御自分で言いますか?ほんとにカッコいい人は自分で言いませんよ?」
「い、いいだろ!頑張ったんだから」
「ソウデスネースゴイデスーアリガトウゴザイマシタ〜」
「……なんか、全然有り難みがないのは気のせいか?」
わたしとアスター王子がぎゃあぎゃあやっていると、ピッツァさんに呆れられた。
「はいはい、痴話喧嘩はよそでやってくれよ?…っと!」
ピッツァさんが短剣を構え、アスター王子がわたしを後ろにかばうように隠した。