捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す〜小姓になったら王子殿下がやたらと甘いのですが?
“母様!なんでアスターのことなんか……!!”
“ミリュエールさん、この子に名前をありがとう。おかげでやっと終わらせられる……”
“母様!!”
アスタークはソニア妃にしがみつくように体を揺さぶる。子どもそのものの幼い行動に、胸が痛んだ。
“ミリュエール、どういうこと?君が来て母様がおかしくなった”
アスタークが怒ったような顔をするけど、わたしは真の目的を彼に告げた。
「わたしは、ソニア妃殿下をこの国からお助けするために来たの。アスターク……ごめんね」
“……ぼくを、騙したの!?”
見る間にアスタークの目に涙が溜まり、ぽろぽろとこぼれ落ちる。そして、次の瞬間には憤怒の表情でわたしを睨みつけた。
“ミリュエールなんか……嫌いだっ!!”
アスタークの金の髪がブワッと広がると、まるで生き物のようにこちらへ襲いかかってくる。腰の短剣を素早く抜いて斬っていくけど、分が悪い。
「アスターク!やめなさい」
「ミリィ!!」
その声が重なったのは、ほぼ同時に。
抱きしめられ護られたのだ、とアスター王子の顔を見て理解した。
自分の手に、ぬるりと生暖かいものが流れてくる。
「……アスター王子、背中が!!」
「いい、おまえが無事ならこのくらい」
「……!」
ポカッ
「おい、さすがに痛いぞ!傷口を殴るな!!」
「それだけ叫べるなら平気ですね」
なんだかドキドキして落ち着かない気持ちが恥ずかしくて、思わずつっけんどんに対応してしまってた。