捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す〜小姓になったら王子殿下がやたらと甘いのですが?
アスタークの方は、ソニア妃が体中で息子を押さえつけていた。
“なんでだよ…母様……母様はぼくと一緒にいてくれるんじゃないの?”
アスタークはソニア妃にしがみつき、グズグズと泣いていた。
“アスターク…ごめんなさい。本当なら、もっと早くあなたを開放すべきだったのに…”
“なんで!?ぼく、なにか悪いことをした?なら、言ってよ?直すからさ…もう、イタズラもしない!好き嫌いもしない!だから…ぼくを捨てないで!!わあああーん!!”
アスタークはソニア妃の胸に飛び込み、むせび泣く。それは、本当に母をなくしたくないと怯えた子どもそのものの姿だった。
“アスター……”
「はい」
ソニア妃が息子を呼ぶ。夢の中であっても、アスター王子には15年ぶりだ。わたしまで涙が出そうになった。
“立派になったわね…あなたを誇らしく思うわ”
「ありがとうございます、母上……」
アスター王子の声が微かに震えるのを、誰が責められるだろう。5歳から15年ぶりの再会なんだから、胸がいっぱいになるに決まってる。
“アスター……わたくしはもうすぐ目覚めます。でも、その前に……”
ソニア妃はアスタークをしっかりと両手で抱きしめた。
“アスタークを、あるべき場所へ還してあげましょう。わたくしのなかへーー”