捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す〜小姓になったら王子殿下がやたらと甘いのですが?
「ミリィ、手を」
「はい」
再開されたオーケストラの演奏で、わたしとアスター王子はダンスホールで踊る。
苦痛な社交だけど、ダンスだけは得意だ。
わりと体を動かせるし、ワルツ、クイックステップ……曲とともに踊ると、なんだかウキウキ気分が浮き立って楽しくなる。
ピッツァさんやソフィア様たちともすれ違い、ウインクされたり小さな笑みを向けられた。
お騒がせしてたレスター王子は、踊る相手がいなくてぽつんと壁の花になってた。同情はしませんけどね。第2妃候補の女性はどうなったやら。
「アスター殿下も意外と踊れますね」
「そういうミリィも楽しそうだな?」
「そりゃあもう!体を動かせますからね!」
満面の笑顔で答えると、吹き出されましたよ……。
ぎゅううう…
「いでっ!」
「あ〜ら、ごめんあそばせ!ステップを間違えましたわーオホホホ」
アスター王子のおみ足を体重をかけて踏んだ上に、思いっきりグリグリしてあげた。ヒールでなくて残念。
それでも顔色変えず踊りを再開するとは、さすが騎士様。
「……御母上が目が覚めた。ありがとう……ミリィ」
突然、ダンスの最中に不意打ちでそんなことを言われたら……アスター王子はずるい。こんなに近いと、誤魔化すこともできない。
「よかったですね、アスター殿下。そのうち弟さんも生まれてきますから……家族が増えますね」
「ああ、そうだ家族と言えば…」