捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す〜小姓になったら王子殿下がやたらと甘いのですが?
「馬丁によると、アクアが妊娠してるそうだ」
「え…えええーっ!」
それは朗報なのか、何なのか。
今の今まで普通の様子だった愛馬が、突然妊娠?まさに青天の霹靂。寝耳に水。
「な、なんで……まだ繁殖にあげてないし、ぼくがいる時以外牡馬とは接触させてなかったのに…」
しかし、アスター王子はサラッととんでもない事を言ってのけた。
「ああ、相手はユニコーンだろ」
「えっ!?そんな……ことが?」
「ああ、オレも念のため確かめたが……アクアの腹部から小さいが水属性の幻獣の性質を感じた。ユニコーンと同じ……なら、アクアが宿したのはユニコーンの子どもだろう」
まさか、まさかの展開だった。
そりゃあ、アクアはユニコーンと交流があったし、やたら気にはしていたと思うけど……。
でも、とわたしは思い出す。
ユニコーンは……アスタークへいのちを還したために、絶命した。そのいのちがアクアに継がれたとしたら……。
「……よかった……ユニコーンの命は……アクアが継いでくれたんですね…」
唯一、苦かった後悔していた部分。ユニコーンの子ども……どうなるかわからないけれども、新しいいのちが来年夏には生まれてくる。
「そうだな……アクアの子どもと母上の子ども。どちらが先に産まれるか楽しみだな」
「はい!……あ、でもあのとき妊娠知らずに3人乗っちゃいましたけど……」
「どちらも影響はないみたいだ。ユニコーンの仔だからだろう」
ほっとした。
どちらも、人の手で翻弄され不幸になったいのち……新しい世界では、どうか幸せに…そう祈らずにはいられなかった。