捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す〜小姓になったら王子殿下がやたらと甘いのですが?

「ミリィ」
「はい」
「……おまえを、従騎士にする」
「!!」

アスター王子からそう告げられ、嬉しすぎてステップを忘れ立ち止まってしまう。

「ほんとう……ですか?ぼくを従騎士に……まだ、自分でも不十分と思ってたのですよ?」
「確かに武芸はまだ未熟だ。だが、おまえはこの半年で素晴らしい成長を遂げた……精神的にも、な。驕り高ぶる人間だったら、オレは永久に従騎士にはしない」

人を評価する時は厳しいと評判のアスター王子に、そう言われていただいたら……これまでの苦労が一瞬で報われた気がした。

「ありがとう……ございます!これからさらに努力します!よろしくお願いします!!」

ドレス姿も忘れて、アスター王子に深々と頭を下げた。銀の拍車を手にして、涙をこらえるので精一杯。

(やっと……やっと騎士への第一歩だ。これからもっと苦難が待ってるかもしれない。でも、負けない!わたしは……アスター王子がいるから頑張れる)

でも、とわたしはアスター王子に忠告しておく。

「……じゃあ、アスター殿下。これから騎士のお手本を見せてくださいよ?裸で部屋をうろついたり、寝坊したり、部屋を荒らしたり、酒癖悪いとか直してください」
「……努力する」
「歯切れ悪いですね…あ、あと殴られて喜ぶ変態も直してください」
「誰が変態だ!」


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