捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す〜小姓になったら王子殿下がやたらと甘いのですが?

なるほど、確かに。
生母様に似たサラサラのプラチナブロンドと、凛々しく美しい顔立ち。淡いブルーの瞳は珍しい宝石のようで、吸い込まれそうな引力がある。
騎士だから肌は日に焼けているし、同じ近衛騎士のお父様とは正反対の体格で細身で頼りなく見えるけれども。その実は鋼のように研ぎ澄まされ、引き締まった体だ。

それだけでなく剣技を始めとした武芸も実力はトップクラスだし、一度見たトーナメント(練習試合)の、馬上槍試合でのランス(槍)の扱いは素晴らしかったし、仕事でも活躍されて。なるほど、女性方に好かれるのもわかるけれども……。


その淑女方がこんなミノムシみたいな、亀みたいなアスター王子を見たら、なんておっしゃるやら。

「タオル」
「はい」
「着替え」
「はい……って!」

バサッと布団が広がると、いきなり全裸のアスター王子の姿が視界に入る。慌てて顔を反らし着替えを押し付けるように渡した。

「また、裸で寝てたんですか!もう5月とはいえ、夜はまだ冷えます。風邪ひきますってば!」
「はいはいー」
「はい、は一回ですよ!」

(まったくもう……!一応、わたしが年頃の娘ってこと、全然気にしてないよね)

初日前に挨拶に行った時、“女扱いしないから覚悟しておけ”と言われたし、男装しろとは命じられたけど。それって、こういう意味もあるの!?

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