捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す〜小姓になったら王子殿下がやたらと甘いのですが?
アスター王子は咳払いすると、突然わたしの前に跪く。そして右手をわたしに差し伸べ、左手を自らの左胸に当てた。
「ミリュエール・フォン・エストアール嬢……どうか、一生私のそばにいてほしい」
「……?」
アスター王子の唐突な申し出に、わたしはきょとんと見るしかできない。
それはたぶん、世間一般では違う意味だったんだろう。
(一生一緒に…?どういう意味??あ、そうか!きっと騎士になっても仲間になってくれって意味だよね。つまり、頼りにしてるぞ!って…ええっ!?)
「アスター殿下……本当に、ぼくなんかでいいんですか?」
「ミリィだから、いいんだ……他に誰も要らない」
請うような真摯な眼差し……。
少しだけ、心臓がトクトクとざわめいてる。
(……そんなに、騎士としてのわたしの将来性を買ってくださるなんて……)
嬉しすぎて嬉しすぎて、涙をこらえるのが大変だった。
「……はい、ぼくでよければ……よろしくお願いします」
わたしがそう答えた次の瞬間ーー
会場全体がわあっ!と湧き上がり、盛大な拍手が聞こえてきた。