捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す〜小姓になったら王子殿下がやたらと甘いのですが?
「それでは、アスター・フォン・ゼイレーム王子とミリュエール・フォン・エストアール男爵令嬢の婚約が今、ここで成立したことを国内外に宣言しよう」
国王陛下が朗々と高らかに宣言され、より一層拍手とお祝いの歓声が上がる。
「へ〜アスター殿下、ご婚約ですか。おめでとうございます」
お祝いを述べたら、なぜかアスター王子に変な顔をされた。
「……なに言ってる?オレとおまえが婚約したんだぞ」
「へ…?ぼく……と、アスター殿下が?え……ええええっ!??」
わたしの素っ頓狂な叫び声が、会場に響き渡る。
「な、なんですかそれ!だまし討ちは卑怯ですよ!!」
「なに言ってる?メダリオンを贈り返してきただろう?メダリオンを贈り合う行為は、求婚とそれを承諾する意味だ」
アスター王子の説明に、ギシッと体が固まった。
そうか……それでお父様もお母様も……周りもみんな、あんな反応だったんだ!
「ぼ、ぼくは知りませんでした。だから無効です!」
わたしが抗議すると、アスター王子は悲しげな瞳を向けてくる。
「……そんなに、オレは嫌か?」
(ず、ずるい……そんな目……)
思い返せば、アスター王子といるのはもはや当たり前で。わたしの日常となっている。
やっと15歳になった自分の将来は、まだぼんやりとしか見えないけれども……。
別にアスター王子の隣にいてもいいくらいには、好感がある。
「……仕方ないですね。ただし、仮ですからね!仮!本当に好きな人ができたら言ってくださいね。喜んで婚約破棄しますから!」
「……わかってない…」
「なに、落ち込んでるんですか?ほら、踊りましょうよ!」
「待て!引っ張るな!!」
今はこうして、笑って2人でいれればいい。
きっといつか。あなたのもとで、きっと立派な騎士になってみせるから。
(終)