捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す〜小姓になったら王子殿下がやたらと甘いのですが?
ここの食堂での騎士見習いの食事は、主人のおこぼれが基本だ。パンだけは別にいただけるけれども、肉や魚野菜果物類は、すべて主人の騎士がどれだけ残すのか、による。
(あれ、アスター王子…今日も少食?)
うずらの香草焼きは半分残ってるし、ハーブのサラダもポーチドエッグもウインナーも、つついた程度。
(体調わるいのかな…?でも、最初からこんなのだし、ありがたく頂こう)
食卓につき、食前の祈りを捧げる。
(いのちをありがとうございます……いただきます)
「おい、おい!ミリィ、えらく豪華じゃないか!」
トレーを持ったフランクスがため息をつきながら、わたしの向かい側の席に座る。彼のトレーに載っていたのは、白パン2個とスープだけ。
「え、それだけなの?」
「そうだよ!おれの主人は遠慮なく食い尽くすからさ……このスープだって、給仕の人が同情して特別にもらえたんだ。育ち盛りがこれで足りるかっての!」
ぶつぶつ文句言いながらスープをスプーンでかき混ぜてる。たしかに、これじゃ絶対足りなくなるよね……。と、わたしはフォークで香草焼きとソーセージをフランクスの皿にこっそり分けた。本当はマナー違反だからね。
「おお…いいのか?」
「あんまり食べると眠くなっちゃうから」
「サンキュー!……おまえ、いい上司持ったよな。いつもこんなにくれるなんて。体を動かす仕事なのに、なかなか無いぜ」
フランクスの指摘に、確かに、とわたしも思った。