捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す〜小姓になったら王子殿下がやたらと甘いのですが?
わたしはまだ従騎士じゃないから、武器や鎧の手入れは任せて貰えない。早く従騎士になりたい!
昼までは城の雑用をこなしたり、司教様から騎士としてのマナーや教養を学ぶ。
お昼ごはんはアスター殿下のお供をしてから、やっと自分の番。お昼ごはんだけは、騎士見習いでも一人前をいただける。ありがたい。
午後は訓練の時間。合同で鍛錬することもあれば、一人ひとりでメニューを組むこともある。
今日は木登りの訓練。
最初は子どもの遊びと軽く見ていたけど、ところがどうして。樹齢何百年と言われる大木が城内にいくつかあるけれども、高さ10mはあるそれを繰り返し上り下りするのは、相当な体力と筋力がいる。
「よし、頑張るぞ!」
ブーツを脱いで裸足になり、するすると上る。誰かが「よ、サルのミリィ」と囃し立てるけど、後で覚えてなさいよ!
もう一本の木には、フランクスがヒイヒイ言いながら青い顔で上ってる。高所恐怖症で、騎士になれるのかしらね?
そしてもう一本の木を見ると、わたしを睨みつけるトムソンの姿があった。
「ふん、遅いな。そんなのろまでよく騎士を目指すなんて言える。いざという時に使えないやつはさっさと去れ」
(あ〜あ…またか)
トムソンはお父さまに仕える小姓で、フランクスと同じ13歳。今年14になったら従騎士になる。
伯爵家の次男でエリートコースを歩んできたからか、やたらわたしに突っかかってくるんだよね。