捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す〜小姓になったら王子殿下がやたらと甘いのですが?
ミリィの1日2
合同訓練を終えたら、各々個別メニューで鍛錬再開。
木剣での素振りと、藁人形に向けての打ち込みと、走り込みに足腰鍛錬のための城の中での荷運び…エトセトラ。
「えい!えいっ!」
元々実家にいた頃から鍛錬はしていたものの、やっぱり実戦に挑む騎士になるからには中途半端ではいけない。体力も筋力も男の子より劣るなら、それをカバーする力を手に入れなければ。
木剣での素振りを終え、鍛錬場に移動すると……やってる。やってる!
騎士見習いと騎士の鍛錬場は分けられているから、わたしが使う鍛錬場は同世代が多い。たまに騎士叙任間近の従騎士の訓練が見られるのがラッキー。その場合木剣でなく真剣を使うから、緊張感が段違いだ。
剣技は基本的に仕える騎士に似る。わたしはまだ真剣に触れたことはないけど、たぶんアスター王子に教授していただくんだろうな。
「さて、と……」
基本の上段構えから、藁人形に思いっきり打ち込む。
その後は中段構え、下段構え、脇構えからの打ち込み。アスター王子に、少なくとも100回ずつやれって言われてんだよね…。
そう、わたしがこなす鍛錬メニューはすべてアスター王子が考えたもの。素振り300回の後でこれは、正直キツい。汗だくで両手は痛いくらい疲労してるし、呼吸が苦しい。木剣を持つ手がぶるぶる震えてきた。手のひらは皮が剝けたり、豆が破れ血だらけだ。
でも……負けるもんか!
これくらいでめげてたら、騎士になんてなれない。
歯を食いしばりながら、最後まで木剣を振り続けた。