捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す〜小姓になったら王子殿下がやたらと甘いのですが?

いきなりふわりと体が浮いたと思ったら、間近にアスター王子の顔があってドキッと心臓が大きく鳴った。

「バカか、おまえは!ケガをしたなら素直に言え。無理をすれば悪化して、治るものも治らなくなるぞ!」
「え…ッと…す、すみません……」

びっくりした。
アスター王子がわたしを横抱きにして、医務室まで運んでくださったのだから。

「あの……じ、自分で歩けます」
「却下だ。見たところ足を挫いてるからな。歩けなくなりたいか?」
「……そ、それは嫌です……」
「なら、大人しく運ばれてろ。落馬の体のダメージを舐めるな」
「……はい」

小さな子どもみたいで恥ずかしかったけど、アスター王子の言うとおりにしないと後が怖い。後遺症で動きが制限されるなんて不本意な結果は嫌だ。

(それにしても……やっぱりアスター王子は…すごいな)

初めて(?)体が密着したからわかったけど、すごく固く引き締まった身体だ。力強く、それでいてバネがすごくあってしなやか。わたしの理想そのものだ……なんて考えて、なんだか恥ずかしくなり顔が熱くなった。

(うわあ……今ごろ恥ずかしくなってきた)

でも、なんだろう。布越しに感じるアスター王子の鼓動とぬくもりが、心地よく感じる。お父様とは違う安心感が……あるような?








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