捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す〜小姓になったら王子殿下がやたらと甘いのですが?

「み、ミリィだって……上達してるぞ」
「え?」

アスター王子の口から、信じられない言葉が出た。

「騎乗時の扶助(ふじょ)や、上体のバランス……それから、落馬時の対処方法も。慣れない者は鐙(あぶみ)に足を引っ掛けたまま、引きずられたりするが。よく対応したな」
「あ、はい……実家ではよく落馬してましたから…」

ついつい過去の黒歴史を告白してしまい、かあっと顔が熱くなった。

(うわあ……なんだろう。アスター王子に知られるのがすごく恥ずかしい)

「そ、そうか……」

なぜか、アスター王子もそのまま押し黙ってしまう。
変な沈黙で居心地が悪くなった時、ジョワンさんにとんでもない提案をされた。

「そうじゃ!アスター殿下の部屋にミリュエールどののベッドを運べばいいのでは?」
「「はあっ!?」」

思わず、アスター王子と素っ頓狂な声がハモってしまった。

「そうじゃ、そうじゃ!アスター殿下は起こしてもらえる。ミリュエールどのは歩く必要がない。一石二鳥じゃのう!」

ジョワンさんはニコニコと笑いながらおっしゃいますが……。

アスター王子と同室に?そんなこと、絶対無理でしょう。仮にも未婚の男女なんだから!あらぬ噂が立ったらどうするのよ!?わたしは婚約破棄された令嬢なんだから。アスター王子の評判に傷がついてしまう。


< 28 / 181 >

この作品をシェア

pagetop