捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す〜小姓になったら王子殿下がやたらと甘いのですが?
「だから、何だ?」
アスター王子はきっぱりと言い切った。
「言いたいやつには言わせておけ」
「で、でも……」
まだ納得できないわたしに歩み寄ったアスター王子は、ストンと長椅子の隣に座る。そして、落ち着かないわたしの手に自分の手のひらを重ねてきた。
「ミリィ」
「は、はい」
呼ばれて慌てて見上げると、アスター王子の吸い込まれそうな淡い水色の色彩の瞳に魅せられてしまう。
「そういうときは、オレが護ってやる」
「……アスター殿下…」
不覚にも、ドキンと胸が高鳴った。それから、鼓動が少しだけ速く鳴る。
「オレに任せろ。部下を護るのは上司たるオレの役目だ……それに、今さらオレの評判なぞ気にするな」
せっかくカッコ良かったのに……最後の消え入りそうな声で、すべてが台無しになってしまった。
「はい……そうですね。寝起きが悪い遅刻常習犯の上司ですから、今さら繕いようがありませんでしたね」
」
「…………」
あ、またふてくされた。わたしの指摘が図星過ぎるんだよね、きっと。