捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す〜小姓になったら王子殿下がやたらと甘いのですが?
アスター王子は腰を落として片膝を床に着け、片手を胸に当てて頭を軽く下げた。つまり、騎士として正式な謝罪をなされたんだ。
「貴卿よりお預かりした大切な子弟を傷つけたのは、私の落ち度。心よりお詫び申し上げ、謝罪いたします」
「アスター殿下……」
お父様はアスター王子に向き直り、胸に手を当てて頷かれた。謝罪を正式に受け入れた意思表示だ。
「今度からは、謝罪など必要ありません。ミリィも覚悟を決めて騎士の世界に足を踏み入れたのですから。この程度で怖気づくようなら、縁談をかき集め婚約者でも決めてしまいますよ」
お父様……真顔でおっしゃらないでください。
「お父様、わたしは決して諦めません!騎士の叙任がエストアール男爵家の家督を継ぐ条件。特許状の附帯条件に男女の区別はない……ならば、唯一の子どもであるわたしが騎士になれば、エストアール男爵家を継ぐことができます。元々、わたしはレスター殿下に婚約破棄され社交界より追放された身……今さら、こんな瑕疵のある女にはろくに縁談など望めませんし、相手にもご迷惑がかかります。
ならば……自分が継ぐことが一番でしょう。武官ならば社交界と距離を置いても不自然ではありません。他にはないんです。結婚は…わたしはまだ14ですから、早すぎます。18で成人してから考えてもいいと思います」
改めて自分の固い意思を伝えようと、お父様にそう話した。まだ、婚約者だの結婚だの考えられない、自分の生きる道はこれしかないのだ…と。