捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す〜小姓になったら王子殿下がやたらと甘いのですが?
「あの……アスター殿下、なぜお部屋に?今日は警護の番では」
「代わって公休をもらった」
そして、さらによくわからないのがアスター王子が突然休みを取ったこと。お休みは10日後じゃなかったのでは?
「そんなにホイホイお休みって貰えるんですか?王宮の警備計画なんてずいぶん前から決まってるでしょうに」
「ここ1か月休みなしだったからな。たまにはいいだろ」
(確かに、わたしが王宮に来てからはお休みを取られたことはなかったなあ)
騎士は基本的に月3回の公休と月2回の半休が認められる。体と心を休める時間を作らねば、逆に効率が悪くなるから。
でも、このところ国内のあちこちで不穏な事件が相次いで起きていて、騎士団が駆り出されることがよくある。アスター王子も手伝いに行ってる(危険だからとわたしは置いてかれた)から、ほとんど休んでる時間はなかったんだよね。
「そうですね。じゃあ今日はゆっくり体を休めてください」
アスター王子に割り当てられた部屋から出ようと支度していると、なぜか「どこ行くんだ?」と訊かれたから、当たり前の答えを返した。
「王宮ですよ。司祭様の授業を受けに。これなら足も肩も使いませんから大丈夫でしょう?」
「……気をつけろよ」
心なしか不機嫌にみえたけど、気のせいだよね。だって騎士になるなら司祭様の講義は聴いておかないといけないし。勉強するだけなんだから。