捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す〜小姓になったら王子殿下がやたらと甘いのですが?
授業は原則1日に2時間制。騎士としての心構えやマナー講座、それから一般教養がある。
王宮付属教会の司祭様が出向いてご教授くださる。
今日はバフィーク語の他に、魔術について基礎を学んだ。
「魔術の基本はこころと魂、です。あくまでわたくしたちが自然界や主の力をお借りしていることを忘れてはなりません。術は使い方次第で悪にも聖にもなります」
(うう……難しい)
テキストをいくら捲っても、魔術は不得手でどうにも覚えられない。
それはそうだ。エストアール家は代々武人を輩出する家系だから、血統的に魔術の素質はまったくない。
魔術師はやはり同じ家系から生まれることが多いのと対象的だ。
武術の素質がある人は大抵魔術に適性がない。だから、現実には魔法騎士なんて物語の中だけの話だ。
それでも魔術について学ばねばならないのは、やはりいざ戦いになった時に対処できるようにするため。無知で魔術師相手に闇雲に突っ込むような馬鹿をしないためにも。
「……であるから、ユニコーンやドラゴンなどの幻獣相手にも、この方法は効果的です」
(あ、ヤバ……聞いてなかった)
せっかく司祭様の講義なのに、ぼーっと考え事をしていて聞き逃した。
(でも……ユニコーンやドラゴンかぁ……お父様は小型のドラゴンは見たことあるらしいけど。わたしも見たいなあ……)