捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す〜小姓になったら王子殿下がやたらと甘いのですが?

「フランクスはなりたい騎士が決まってるんだね」
「当たり前だろ!おれは元はしがない農民の息子だからな。剣の腕を見込んで養子にしてくれた義父(とう)様のためにも、名誉をある騎士になってルド男爵家の名を上げるんだ」

フランクスは目を輝かせて夢を語る……少しだけ、羨ましく感じた。

確かにフランクスは地方の少し裕福な農家の出身だ。町の剣術道場に通い地方の剣技大会を勝ち抜き、王立闘技場での大会で優勝した腕を見込まれ、跡継ぎがいなかったルド男爵が領民だった彼を養子にしたんだ。
とはいえ、一応母方でかなり縁遠いとはいえ血縁はあったみたいだけど。

それでも、農民の息子という身分から、男爵家令息。しかも騎士へのエリートコースを歩める……かなりの大出世には違いない。

そもそも、騎士になるには莫大なお金がかかる。
騎士叙任式は自費で、騎士になった後も与えられた領地や使用人の維持に一億ソルト近くかかるし、武器防具は自腹で高価だ。だから、庶民が憧れでなれるものじゃない。

だからかフランクスは誰よりも努力してるのは知ってる。わたしがレスター王子の婚約者として2年間王宮にいたときに知り合い、性別を越えた友達になった。

今は、唯一無二の親友だ。

「羨ましいな……ぼくには、まだ騎士になることしか見えない。どんな騎士になるか、は……男爵家を継ぐくらいしか想像できないよ」

わたしがため息をつきながらそう言えば、フランクスはうーん、と首をかしげた。

「別に、いいんじゃないか?」
「えっ?」
「今、無理に決めなくても。おれたち、どんなに早くてもあと3年は騎士になれないんだしさ。その間に探せばいいんだよ」

フランクスの言ってくれた言葉が、なんとなくだけどこころを軽くしてくれた。



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