捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す〜小姓になったら王子殿下がやたらと甘いのですが?
「国境の北には、フィアーナ王国があるだろ?」
「ああ、知ってるよ。東側はノイ王国だろ」
そんな子どもでも知ってる常識、今さらな気もするけど。
ただ…
「フィアーナ王国は20年前まで戦乱状態だったんだね。お父様も何度か国境防衛戦に参加されてたらしいし」
「そう。今は平和だけどな、あちらは世界有数の大国だし、もともといろんな国が連合国として成り立ってる。つまり…もともと小国のトップだった奴らが、広大になった国のトップにと望む。で、未だ内部闘争が凄まじい。今はファニイ女王陛下が治められてるが…」
「野望を抱くやつがいる、ってことだね」
ぼくが答えを出せば、フランクスはうなずく。
「実際、3年前にフィアーナから兵を出してきたバカがいるんだよ。国境の村を強引に占領しようとしてな。ただ、アスター王子が凍った橋の上ですべて撃退されたんだ。たった一騎で、100の兵を退けたんだ!すげーだろ!?」
「……」
一騎で、100の兵を退けた?
そんなことが……本当に出来るの!?
にわかには信じられない。
「それが本当なら……すごいね」
「本当に、じゃなくて現実にあったことだ。まぁ、アスター王子は国民に知らせたら、怖がらせてしまうから…と、箝口令を敷いたみたいだけど。騎士の間じゃ常識。公然の秘密ってやつだ!」
「すげーよな!カッコいい!!おれも、アスター王子に負けない騎士になる!」
みんなから教えられたアスター王子と、わたしがよく知るアスター王子。ギャップがすごすぎてよくわからなくなってきた。