捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す〜小姓になったら王子殿下がやたらと甘いのですが?

「水ならば、体が浮く」
「はい」
「水の中で体を動かせば抵抗もある」
「あ……」

なんとなく、アスター王子の言いたいことがわかってきた。

「つまり……水泳ですね。泳いで鍛える……と」
「そうだ。体が浮けば足に負担はあまりないだろう」

だから、アスター王子はわたしに“上着の下はなるべく軽装にしろ”なんて言ってたんだな。

(水泳か……確かに、ケガをした足には良さげな鍛錬方法だわ)

羽織っていた上着を脱ぐと、薄手の半袖シャツと足にピッタリフィットするスパッツ姿になる。
皮のブーツを脱いで準備運動を始めると、アスター王子は好きに泳ぎ始めてた。

(なんか楽しそう……ま、いいか。わたしのためにわざわざ連れてきてくださったんだし。殿下は本当ならお休みなんだから)

十分体をほぐして温めたあと、ゆっくりと片足を水に浸けてみる。

「つ、冷た……」

ひんやりした水は水遊びにはまだ早い。日差しは夏のように強くても、まだまだ夏の陽気でない以上は仕方ないけれども。

(え〜い、女は根性!行くよ)

バシャバシャと手のひらから水を浴びて、ゆっくりと体を水温に慣らす。アスター王子が湖の端を3往復目するころ、ようやく肩まで水に浸かった。




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