捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す〜小姓になったら王子殿下がやたらと甘いのですが?
でも、レスター殿下のそんな情熱も2年と持たず、1か月前に王宮にわたしの侍女として上がったアニタ嬢を見初めたらしい。ちなみに、彼女は13歳とか。
無論、準男爵令嬢が王子の正妃になんてなかなかなれるものじゃない。本人も親族も諸手を挙げて大喜び。色々着々と進められ、今現在に至ります。
「ああ、可哀想なアニタ……意地悪なミリュエールに嫌がらせされ、さぞかし怖かっただろう」
「はい…レスター殿下…ミリュエール様はご主人ですから。わ、わたし…どうしていいかわからなくて…」
ハラハラと涙を流す可憐な彼女を、レスター殿下はがっしり抱きしめる。ピンク色の空気をまき散らしながら抱き合う2人は、冷たい視線がこれでもか、と集中してることはまったく気にならない様子。
「よいか。アニタは優しいからキミは社交界よりの追放のみという処分で済むのだ。アニタの寛大さに感謝し、今後身の程わきまえた生き方をするのだぞ!」
レスター王子の宣言に、会場がざわめく。
社交界からの追放……貴族令嬢としては、致命的だ。
今後どこかに嫁いでも、他家のパーティーや舞踏会等に出席できず逆に開催もできないということ。
貴族としてはあり得ない。
だけど……。
(むしろ、わたしには願ったり叶ったりだわ。社交界なんてこの2年でうんざりさせられたもの)
心のなかでレスター王子に拍手を送りたいくらいだった。
「承りました。わたしは今後お二人に関わりませんわ。お幸せをお祈り申し上げます」
最上級の笑顔と振る舞いで王宮を退出できたわたしは、家に帰り飛び跳ねるくらい喜んだ。