捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す〜小姓になったら王子殿下がやたらと甘いのですが?
「ミリィ!!」
呼ばれて、ハッと我に返った。
「あれ……アスター殿下?アクアまで……」
わたしの目の前には、アスター王子の心配そうな顔がある。どうしてかアクアまで顔を突き出してきて……わたしが呼ぶと、彼らはほっとした様子だった。
「……よかった」
「え、何がですか?」
アクアの顔を撫でながらわたしが疑問を口にすると、アスター王子は驚いたのか目を見開く。
「……おまえ、覚えてないのか?」
「え?」
覚えていないって、なんだろう?ますます意味がわからなくてアスター王子を見上げると…あれ?見上げる?
そういえば、アスター王子はわたしを上から覗き込んでる。おかしいな……王子は空を飛べるの?
なんて馬鹿な想像は一瞬で。
自分の背中に水とは違う地面の固い感触と、体を覆う布地の重みでわかった。自分が横たわっているんだ、と。
「ぼく……どうしました?あ……」
体を起こそうとすると、頭がクラリとして体に力が入らない。そのまま再び横たわると、アスター王子が説明してくださった。
「ミリィ、おまえ湖の底で溺れかけていたぞ」
「え……」
「ずいぶん上がって来ないから心配して探したら、湖の底で力なく漂ってたんだ。なんとか助かってよかったが……」
アスター王子が気落ちしているのが見て取れたから、わたしはすぐに励ました。
「これは、ぼく自身の責任ですから。アスター殿下は何も悪くありません。むしろ、助けてくださったのですから感謝しかありませんよ」