捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す〜小姓になったら王子殿下がやたらと甘いのですが?
それに、とわたしは見たことをアスター王子に話した。
「夢かもしれませんが、ぼくはユニコーンを見ました」
「ユニコーン……?」
「はい。ガラスのベルの実を鳴らした巨木の木漏れ日から現れたんです。アクアのように体は真っ白で、額には長い角。馬みたいな体でも蹄は鹿で、尻尾は細く。深く青い瞳でした。アメンボみたいに水面を歩いてましたね」
「…………」
アクアの首すじを撫でながら説明したら、アスター王子は眉間にシワを寄せ、何事か考え事をしていた。もしかして気が狂ったとでも思われたかもしれない。でも、見たものは見てしまったんだから仕方ない。
「アスター王子、ぼくの頭がおかしいって思いましたか?」
「いや……」
アスター王子は顎に手を当てて、フッと厳しい表情を緩めた。
「信じるさ、ミリィ。おまえの言うことだからな」
「えー…ありがとうございます……ですが、そんなにホイホイ信じちゃっていいんですか?変な女に騙されたりしてませんか??」
「……なんで女に騙される前提なんだ……」
呆れた表情のアスター王子だけど……よかった。いつもの彼に戻ってる。
なんとなくだけど……一瞬、王子に暗く重い空気を感じたから。
「え、違うんですか?だってアスター王子20歳なのに、まだ婚約者いませんよね?騙されて女性不信になってるのではと」
「騙されてない!余計なお世話だ!!」