捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す〜小姓になったら王子殿下がやたらと甘いのですが?
しばらく木陰で休む。
さわさわと頬を撫でる薫風と、きらきらした木漏れ日が心地よい。
アスター王子がバスケットを広げると、サンドイッチと飲み物が見えた。
一応、わたしは小姓だからアスター王子の給仕を申し出る。渋られたけど、こればかりは譲れない。
木製のプレートに黒パンのサンドイッチと果物とチーズに飲み物を載せる。地面にハンカチを広げてから、それを上に置いた。
「アスター王子、召し上がってください」
「ミリィも食べろ。でなければオレも食べない」
「は?」
また、何を言い出すんですか。この王子様は。
「いいから、さっさと召し上がってください。あなたが食べ終えないと、ぼくが食べられないんです」
いつもだったら、これで折れてくれるのだけど……。
どうしてか、今日は素直に従ってくださらない。
「ミリィ。上司として、王子として命ずる。一緒に食事を取れ」
「………」
ずるい。
そんなふうに命令されたら、従うしかないじゃないか。
「……わかりましたよ」
本当に本当に不本意ながら、バスケットの中身を木皿に出す。きっちり2人前あったメニューをプレートに載せて、2人で食前の祈りを捧げた。ついでにアクアにはにんじんとりんごを。
(……まったく、なんなんだろ……アスター王子は…)
心の中でぶつぶつ文句をつけながらサンドイッチにかぶりついた瞬間、思わず声を上げた。