捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す〜小姓になったら王子殿下がやたらと甘いのですが?
「肩と足の痛みはどうだ?」
食休みの最中にアスター王子が訊ねてきたから軽く動かしてみると、どちらも少し違和感があるくらいで痛みを感じなくなってた。
「はい、痛みは……びっくりするくらいないですね」
「そうか……カツレ草が効いたんだな、よかった」
「えっ、カツレ草?」
耳を疑う単語が聞こえたけれども……まさか。気のせいだよね?
だって、カツレ草は魔術オンチのわたしでも知ってるくらい有名で、貴重かつ高価な万能薬の原料になる薬草。一束で下手すると城一つ買える。
肩と足首がひんやりするから、手作りの湿布でも貼ってくださったのかな?くらいで考えてたのに。
「な、なんでぼくなんかに貴重なカツレ草を……御母上様にでも差し上げてください」
「あいにく母上には効かなかったし、オレはケガをしてない。それに、せっかく群生地に来たなら採取ついでに活用してもバツは当たらない……余った分は医務室に渡す」
「群生地……?あるんですか、ここに?」
信じられない気持ちで訊ねると、アスター王子は「ああ」と頷く。
「おまえは悪用しないだろうから言っておく。この湖のとある場所の底に生えた水草……それが、カツレ草の正体だ」
彼の話になるほど、と合点がいく。草と言われて大抵の人は地面に生えた雑草を思い浮かべるだろう。けれども、実際は湖の底にある水草。そりゃあ見つからないわけだ。