捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す〜小姓になったら王子殿下がやたらと甘いのですが?
ユニコーンは倒木に腰掛けた貴婦人に近づくと、彼女に向かって顔を近づける。貴婦人が手を伸ばして鼻の辺りを撫でると、目を細めてうっとりした顔でさらに体を寄せていった。
「あれ?ユニコーンって獰猛な性格じゃなかったんでしょうか?」
ぼくが知るユニコーンの知識だと、通常は人間を角で突き刺すくらい獰猛だし、あまりの暴れっぷりで捕獲は困難。万が一人間に捕まったら自殺するくらい誇り高い生き物だ…というもの。崖から落ちる時は角を突き立てて逃れるとか。
「概ねそれで合ってる。だが、ユニコーンが唯一近づける存在がある。それは、人間の女性だ」
「え?女性?だからぼくもなんにもされなかったんですかね?」
アスター王子の説明になんだか疑問が湧く。なぜ、男性がだめで女性がいいのか?
そのうちにユニコーンは脚を折ってしゃがみ込むと、信じられない行動に出た。
貴婦人の膝に頭を預けると、目を瞑って眠りについたんだ。
「ちょっと待て……まさか」
アスター王子は、ハッとしたように言う。
「ユニコーンが唯一近づけるのが、人間の乙女。しかも着飾った乙女だ。100年ほど前に、それでユニコーンを捕らえた人間がいた」
「ビヒヒーン!」
アクアが嘶いたとほぼ同時に、隠れていた人間たちが一斉に飛び出しユニコーンに襲いかかろうとした。