捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す〜小姓になったら王子殿下がやたらと甘いのですが?
「密猟!…ヤバい!アクア、行くよ!!」
「ヴルゥ!!」
わたしが咄嗟にアクアに飛び乗ると、すかさずアスター王子もその後ろに乗る。
アクアは信じられないスピードで湖の淵を回り込み、最短距離で現場へ駆けつけられた。
「ヒヒーン!!」
ユニコーンは首や角や胴体まで縄をかけられ、どうにかしようと暴れてる。それでも屈強な男十人あまりに押さえつけられ、さらには網を被せられては多勢に無勢。武器の角は動かせないよう、綱で近くの木にくくられてた。
そして、のこぎりを持った男がユニコーンの額の角を狙う。
「ヴヒィィン!!」
「させない!」
アクアがユニコーンに向かって一直線に突き進むと、ギリギリのタイミングでわたしは飛び降りる。アスター王子はいつの間にか抜刀し、ユニコーンの角を捉えた綱を断ち切った。
アクアは牝馬にしては雄大な体を活かし、男どもに体当たりする。女性十人分以上の重さだから、いくら力自慢でもひとたまりもない。おまけに強力な蹴りまで繰り出すから、すぐ散り散りになる。
アスター王子はそのまま切り込み、武器を持った男と斬り結んでいる。数人に囲まれてはいたものの、圧倒的強さで比較にならなかった。
「ぼくだって!」
アクアとアスター王子が活躍してるんだ。わたしだって戦える!
木剣を構え、まだユニコーンを押さえようとする男に飛びかかった。