捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す〜小姓になったら王子殿下がやたらと甘いのですが?

「あんた、大丈夫かい?」
「は、はい……大丈夫、です」

女性が駆け寄ってすぐ傷を見てくれたけど、わたしの傷を見て眉をひそめてしまう。

「こりゃ、まずいね。今ナイフを抜くと大量出血しちまう。あんた、もう少し我慢できるかい?」
「は、はい。平気です」

多少の痛みやケガは、騎士になるなら当たり前だ。これくらいで泣き声なんて言えない。歯を食いしばって耐える。

「悪いね、あとちょっとだから」

倒れた男達を縛り上げ木に括り付けた女性は、腰に下げたポーチから乾燥した葉っぱのようなものを取り出し、いきなりわたしの口に突っ込んだ。

「に、苦っ……」
「痛み止め。気休めだけどね」

そう女性はニカッと笑い、「ここでいい子にしてるんだよ」と言い残して、ユニコーンのいる場所へ突っ込んでいった。

「アスター!ほらよ!!」

女性が腰に下げていたもう一本の剣を放り投げると、それをアスター王子が受け取る。それからのアスター王子は凄まじい剣さばきで、周囲を取り囲む十人以上の男たちをあっという間に斬り捨てた。

「アスター王子……二刀流……だったんだ……」

痛みに耐えながら、ぼんやりする意識の中で彼の活躍を見た。その圧倒的な強さは、並みの剣士や騎士では歯が立たない。片手剣でも強いのに、それが2倍になればすごく強いに決まってる……。

(よかった……)

ユニコーンが無事に助かり、アクアと鼻先を突き合わせているのを見たのを最後に、ふつりと意識が途切れた。

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