捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す〜小姓になったら王子殿下がやたらと甘いのですが?
“ミリュエール”
なんだろう……
ふわふわとあたたかい。
大きな綿や羽毛の布団にくるまれているみたいだ。
そして、太陽のぬくもりを感じる。
“ミリュエール”
誰、だろう?わたしを呼ぶのは。
優しくて綺麗な声。
ぽちゃん、と雫が落ちる音が耳に入って目を開ければ、目の前にユニコーンの姿があった。神々しいほどに白く輝いた馬体。
「綺麗……」
“ミリュエール、よく慈愛の心でわたしを助けてくれた。そなたは真の乙女……戦乙女だ”
「戦乙女……?」
“主よ。いつでも、わたしを呼ぶがよい。水があれば駆けつけよう”
ヒヒヒーン、と嘶きが響き渡る。それが合図のように、ゆっくりと意識が浮上して現実へ戻ってきた。
「ミリィ……!?」
目を開いてすぐアスター王子の顔があって、なぜか息が苦しい。
「おい、おい。せっかく目が覚めたのに窒息させる気か、アスター?」
女性の声が聞こえてからようやく呼吸が楽になって、アスター王子がわたしを抱きしめてたんだ、とぼんやりした頭で理解した。
「ミリィ、痛いところは?苦しくないか?」
「アスター王子……ぼくは?」
まだ状況が把握できなくて訊ねれば、代わって答えてくれたのが赤髪の女性だった。
「あんたは、ユニコーンを助けるために戦って、ナイフでケガをしたんだよ。結構な深手だった」