捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す〜小姓になったら王子殿下がやたらと甘いのですが?
「お父様、お母様。お願いがあります。わたしは騎士になりたい。なので、王都へ行かせてください」
長年の願いを口に出せば、やっぱり両親ともに顔が強張る。お父様なんて一目で反対だ、とわかる渋面を作られた。
でも、どれだけ反対されようとわたしの意思は強いつもりだ。生半可な甘い考えで覚悟を決めたわけじゃない。
「ミリィ……なぜ?あなたは女の子なのよ?まだ子どもだから今までは好きにさせてきたけれども……これから花嫁修業をしなくてはならないわ。そんな大切な時期に武芸なんて……第一、いくら鍛えてもそろそろ男の人には勝てなくなってくるわ。ケガだってするし、最悪……命の危険だって……」
その先は想像もしたくないのか、唇を戦慄かせたお母様は両手で顔を押さえる。心配してくださる気持ちは痛いほどわかるから、わたしはごめんなさい、としか言えない。
「そうだ、ミリィ。マリアンヌの言うとおりに、騎士の世界は厳しい。甘ったるい憧れだけで続くものではないぞ」
勲章もいくつも得てる騎士団副団長のお父様だから、その厳しさは誰よりも理解してる。だからこそ、我が子をその世界へ足を踏み入れさせたくないんだろう。
けれども、反対は承知の上だ。
わたしはすっくと立ち上がり、傍らに置いた木剣を手に取りお父様へこう告げた。
「では、わたしの意思を確かめてください。すべては剣が語ってくれるでしょう」