捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す〜小姓になったら王子殿下がやたらと甘いのですが?
「元々、ユニコーンの密猟計画を察知してね。アタシが潜入してたってわけ」
ピッツァさんが説明する通りに、最近各地で幻獣を密猟する事件が頻発しているらしい。ユニコーンの角はあらゆる病を治すゆえに、特に密猟者に狙われやすいとか。
「でも、どうしてぼくはケガが治ったんでしょう?」
ナイフは足と肩に近い右胸に刺さった。少なくとも数センチは刺されていたと思う。だけど…起きたら痛みどころか傷がない。むしろ、落馬のダメージのケガすら消えたようにすっかり良くなってた。
「ユニコーンが角を使ったからだ」
いじけてたはずのアスター王子が説明してくれた。
「オレも知らなかったが、ユニコーンがおまえの傷に触れただけでまたたく間に傷が治ったんだ」
「ユニコーンが……」
穴が空いたシャツにそっと触れてみた。
「……実は、夢にユニコーンが出てきて、ぼくを“戦乙女”と呼んで、いつでも呼べと言ってました」
「ひゅ~!そりゃあ、すごいな。ユニコーンに認められた騎士なんてね。少なくともアタシは聞いたことがない。ミリィ、そりゃ胸を張れると思うよ」
ピッツァさんが口笛を鳴らし、感心したように言ってくれた。