捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す〜小姓になったら王子殿下がやたらと甘いのですが?
ピッツァさんが呼んだ数十人の騎士達がならず者達を捕縛し、そのまま馬車で連行する。
ピッツァさんもそのまま同行するようだ。
「じゃあな、アスター。ミリィ、その気になったらいつでもアタシの宿舎に来なよ」
楽しげに笑いながら言うけど……。
「いいお話ありがとうございます。でも、ぼくはアスター殿下の小姓ですから。一度お仕えしたんです。無責任に放り投げる真似はしたくありません」
そう答えた途端、アクアの背に乗ったアスター王子の体がピクッと動く。ピッツァさんもニヤニヤ笑いで、わたしとアスター王子の背中を叩いた。
「ま、道は遠いだろうが……頑張りな!」
「……?はい。ありがとうございます」
わたしはまだ従騎士でもないから、騎士への道は遠いのはわかる。でも……なぜ、もう騎士であるアスター王子まで励ますんだろう?
たぶん、同僚として励ましただけだろうな、うん。きっとそうだ。
「ああ……そうだな」
アスター王子は拳を作り、ピッツァさんの拳とコツンと当て合う。騎士同士の励まし方だ…いいなあ。
「さぁ、帰りましょう……アクア?」
いつもなら扶助すればすぐに動いてくれるのに、アクアはまったく反応しない。ジッと湖の先を見てる?不思議に思って視線を辿ると、その先にはユニコーンがいた。
ヒヒヒーン、と嘶いたユニコーンは、そのまま光の中へ消えていく。
「ビヒヒーン!」
まるで答えるように嘶いたアクアは、ゆっくりと歩き出した。まるで後ろ髪をひかれるように。