捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す〜小姓になったら王子殿下がやたらと甘いのですが?

ユニコーン密猟未遂事件から2ヶ月経ち、すっかり暑さが本格的になった。
同時に上流階級では社交シーズン。
5月から8月までが王都が一番賑やかになる時期。

地方に領地を持つ貴族もこの季節は王都にある別宅タウンハウスに一時的に居を構えて、社交やお付き合いに精を出す。
毎日どこかで舞踏会やパーティーが開かれ、王都はいっそう華やぐ。わたしがレスター王子の婚約者だった時期、うんざりするくらい引っ張り回されたっけ。

(でも、もう関係ないね。なんたってわたしは社交界から追放されたのだし、騎士見習いなら社交界はほぼ無関係。キツいコルセットを締めてドレスを着なくていいんだし……最高!)

ほくほく顔で部屋に戻ると、アスター王子はなぜか姿がない。いつもなら、ベッドに入ってる時間なのに?

(そういえば、最近夜にいなくなることが多い……でも、仕方ないよね。アスター王子にもプライベートはあるんだから……)

アスター王子が居ないなら、とこれ幸いと水を張った桶にタオルを浸し、固く絞って顔と首を拭いた。
とっくに怪我はなおったのに、同室で過ごすのが今では当たり前になってる。わたしは何度も戻りたいと訴えても、アスター王子が許してくれない。だから、体を拭くにも気を使ってしまい疲れる。

(うん、やっぱり汗だくは気持ち悪いから……体も拭いちゃおうっと)

シャツを脱いで上半身裸になると、濡らしたタオルで汗を拭った。

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