捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す〜小姓になったら王子殿下がやたらと甘いのですが?

城内の鍛錬場で、お父様と一対一で向き合う。

ワンピースから鍛錬服のズボンとシャツに着替え、髪も縛って動きやすい皮のショートブーツ。手には長年使い込んだ革手袋。皮の胸当て。そして、愛馬のアクアに跨ってる。

(久しぶりだわ…この緊張感)

お父様も似たりよったりの格好だけど、さすがに騎士団副団長。もともとの長身にくわえ、鍛え上げた鋼のような肉体の迫力はすごい。跨がる愛馬のファルコも歴戦の戦馬だ。

お父様は白髪が混じり始めた茶色い髪とひげでぱっと見怖く感じるけれども、優しげな青い瞳で中和される。

お母様は銀髪とシルバーグレーの瞳で、わたしはどちらかと言えば顔はお父様似だけれども、お母様から受け継いだシルバーの髪と瞳は綺麗だと自分でも思う。だから、黙っていればお淑やかな美少女に見えるとよく言われた。

「ミリィ、やめなさい!落馬やケガをしたらどうするの?」
「お母様、わたしは本気です。王宮でも密かに鍛錬は積んできました」

そう。レスター王子の婚約者として王宮にいた間も、空きを見ては訓練してきた。兵士に混じってしれっと鍛錬に参加したこともある。

そりゃあ、お妃教育やレスター王子との付き合いや交流で実家にいた頃よりは制限されていたけれども。それなりに頑張ってきた。

「マリアンヌ、やめなさい。ミリィは言い出したら聞かない子だ。君もよく知ってるだろう?」
「あなた……」

お父様が意外にも加勢してくださり、お母様は渋々認めてくださった。

「この一度きりですからね。負けたら花嫁修業のため、ジョワユーズ家に預けますからね」
「わ、わかりました」

お母様、目が据わってますね。
< 8 / 181 >

この作品をシェア

pagetop