捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す〜小姓になったら王子殿下がやたらと甘いのですが?


「悪かったって……おい、まだ怒ってるのか?」
「…………」

馬車で揺られている間、恐る恐るわたしのご機嫌伺いするアスター王子。騎士が見習いにそれでいいんですかね?
まぁ、それでもまだ口をきいてあげる気にはなりませんけどもね。

覗き事件の翌朝。
以前から公休を取っていたアスター王子は、1ヶ月前からこの日お出かけに付き合え、としつこかったので、渋々了承したんだけど。今さらながら後悔していた。

アスター王子はいつもの軽装ではなく、仕立てのいいサマーコートとズボン。髪型もきちんと整えている。
わたしは唯一実家から持ってきたワンピースを着る羽目になってた。薄いブルーのシフォン生地が涼しくて楽だけど。

そして、いつもは目にしない王子の侍従や侍女まで馬車に同乗してる。アスター王子も一応王子として治める領地があり、2人はいつもはそこで働いてるらしい。

侍従は黒目黒髪で明るそうなヴォルさんで、侍女は焦げ茶色の髪をゆるく編んだマイルさん。
なぜ、外出に侍従と侍女が必要なんだろう??

よくわからないまま、2頭立ての馬車は王都の街道を進む。
でも、なんで護衛の騎士が馬で前後左右に配置されているんだろう?



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