捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す〜小姓になったら王子殿下がやたらと甘いのですが?

「ミリュエール様!しっかり御覧になってください」
「はい……」

デザイナーさんに叱られ、面倒だけど布地のサンプルを眺めてみた。

(あ……)

その中でひとつ、気になるものがあった。

澄みきった穏やかな湖のような、どこまでも透明な水色。そこに、さり気なく金糸の刺繍が施されてる。

「あら、お目が高い!それは新作の布地ですのよ。新しい織りを開発しましてね……」
「じゃあ……これで」
「はい!この生地でしたら、デザインはストレートな方がよろしいですわね。シンプルに…あくまであなたらしさを引き立てるように。ああ、久々に燃えるわ」

きらきらと目を輝かせるデザイナーさん…楽しそうでよかったです。

で、型紙はいつまでにできて仮縫いはいつぐらいで……。と具体的なスケジュールを聞いてるうちに、なんだかピンとくるものがあった。


「アスター王子! まさか、ぼくを狩猟館のパーティーに出す気ですか!?」

来月、社交シーズンの終わりには国王陛下主催の大規模な狩猟が1週間に渡って行われる。貴族はそこで獲物の数を競い合うけど……。騎士も交代で参加を認められている。
昼は狩猟、そして夜はパーティーが開かれるんだけど。騎士もここぞとばかりに盛装で参加する……パートナーとともに。

ドレスができるのが、イベントの1週間前なんて。タイミングが良すぎる。


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