捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す〜小姓になったら王子殿下がやたらと甘いのですが?
「ああ、そのつもりだ」
当然と言わんばかりのアスター王子の答えに、頭に血が上る。
「……なんで、ですか」
わなわな、とワンピースを掴む手が震えた。
「ぼくがどんな気持ちで騎士を目指しているか、あなたはわかってくれたのではないですか!?レスター殿下に婚約破棄されて、社交界から追放されて……ぼくが生きる道は、これしかない!そう思ったからこそ……辛くても頑張ってきたんです!それを……」
じわり、とまぶたの奥が熱くなる。
泣くな!と自分に命じて唇を噛んだ。
それでも、視界が膜を張ったように白く濁っていく。
「あなたに否定されたら……ぼくは……」
ぽたり、とひと粒の涙が溢れる。
泣くなんて、みっともない……。でも、今まで張りつめてきたものが、ぷつんと切れたように緩んでしまった。
ごしごし、と手の甲で涙を拭うと、アスター王子に止められた。
「やめろ、目が赤くなる」
「……触らないでください」
険のある声を出したのに、アスター王子は手を離してくれない。
「ミリィ」
「…………」
顔を見たくなくてプイッとそっぽを向いても、アスター王子は話し続けた。
「誤解するな。オレは、おまえの決意も意思も知ってるし、誰よりも理解しているつもりだ……だからこそ
、レスターの身勝手さが腹ただしい。おまえはあんなふうに貶められるべき人間ではないからだ」