捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す〜小姓になったら王子殿下がやたらと甘いのですが?
「なるほどね……」
ピッツァさんは椅子に座ったまま腕を組み、スプーンをくわえて考え事をしてる。椅子を軽く後ろに倒しては戻すから、ギイギイと軋む音が聞こえた。
「……よし、決めた」
パタン、とピッツァさんは椅子を止めて、食べ終えたトレーを手に立ち上がる。
「午後から半休なんだ。買い物にでも行こうかと思ったけど、あんたに付き合うよ」
「え、いいんですか?」
まさかピッツァさんが付き合ってくれるなんて思いもよらず、ありがたいけど申し訳ない気持ちだ。
「せっかくのお休みですよね?ぼくの身勝手に時間を割いていただくのは…」
「いいって。近ごろお見舞いも行ってなかったし、ちょうどいい機会だ。それに、なんだか面白そうじゃないか?アスターがどんな顔をするか」
にししし、と楽しそうに笑うピッツァさん……絶対、それが目的ですよね?
ユニコーンの密猟事件の時もアスター王子をからかってたし、戦いの時も剣を渡すなんて息ぴったりで……。
(あれ?)
なんだか今、胸のあたりが小さくチクッと痛んだような…?
そこに手のひらを当ててみるけど、別にそれから痛みは感じない。首を傾げながら立ち上がると、ピッツァさんがトレーを持って歩きだした。
「ピッツァさん…ここ(近衛騎士団)では、トレーは給仕が下げますから」
わたしが肘で突いて小声で教えると、彼女はあっはっは!と豪快に笑う。あの……目立つんですが。
「ごめん、ごめん!フェニックスだとセルフだからね。じゃ、そこの兄ちゃんよろしくね!」
ピッツァさんは近くの給仕にトレーごと渡して、鼻歌を歌いながら食堂を出た。