捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す〜小姓になったら王子殿下がやたらと甘いのですが?


ソニア妃が眠るのは、後宮の中で離れに近い部屋。白い石で出来た神殿のような造り。中庭は池や小川がある自然豊かな庭園。

眠り病とはいえ、現役国王陛下の妃である以上警備は厳重。ピッツァさんはもと小姓であり、度々お見舞いに来てた騎士だからすんなりと通された。

「よ、調子はどうだ?」
「はい、いつもとお変わりなく」
「……そうか」

ピッツァさんが知り合いらしい侍女に様子を訊ねても、やっぱり変わりはないらしく。彼女も少し気落ちした様子だった。

「……こういうのってさ、元気な頃を知ってる方がきついよな」
「……ですね」

警護してる兵と侍女に頭を下げられ、カーテンを捲った先にソニア妃はいらっしゃった。

天窓から穏やかな陽の光が射し込み、常に水音がするのは引き込んだ水が室内で流れているから。様々な植物があちこちに植わり、なんだか空気が澄んで気分が落ち着く。
ちょうど真ん中に天蓋付きのベッドがあり、ソニア妃が横たわってる。サラサラのプラチナブロンドに、白い肌。目を閉じても隠しきれない美貌で、アスター王子の御母上様とは信じられないくらいお若い。
汚れ一つない真っ白なベッドと寝具は、夫の国王陛下が実に細やかに気を配ってらっしゃることが窺えた。

「なぁ、ソニア。あんた今……どんな夢見てるんだろうな?相変わらず、こっそりケーキ食ってんのかい?」

ピッツァさんが懐かしそうに話しかける。でもやっぱり……ソニア妃からはなんの反応もなかった。


< 92 / 181 >

この作品をシェア

pagetop