捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す〜小姓になったら王子殿下がやたらと甘いのですが?
しゃらん、しゃらん。
湖の小高い丘にあった、ガラスのベルの音。
「……なにか、聞こえます?ベルの音が……」
「え?アタシには聞こえないけど。気のせいじゃないか?」
侍女や侍従の顔を見ても、首を横に振られる。
(じゃあ……わたしにしか聴こえてないってことか)
「ソニア様、甘いものがお好きと聞きました。これ、こんぺいとうという変わったお菓子です。どうぞ、お好きなだけ召し上がってくださいね」
サイドテーブルにコトンとビンを置いた瞬間、ぴちゃん、と水が跳ねた音が聞こえた。
「お、おい……」
ピッツァさんに肘で突かれてふり返ると、予想外のことが起きた。
ソニア妃の白い頬に涙らしき雫がひと粒、流れていた。
偶然かなにか、ただの水滴だったのか……原因はわからない。
その後いくら話しかけてみても、反応は一切なかったけど。ピッツァさんが嬉しそうにソニア妃の手を取り話しかけたのは、誰もが同じ気持ちだったと思う。
「もうすぐ起きるんだよな?なら、とびっきりのケーキをどっさり用意して待ってるからな!アタシが食べきらないうちに起きろよ」