捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す〜小姓になったら王子殿下がやたらと甘いのですが?
「……ミリィ?」
アスター王子の声が聞こえて振り向けば、彼は花束を抱えて困惑したような顔をしていた。
「よ、アスター!ミリィが母ちゃんに会いたいって言ってたから、連れてきてやったぜ」
ピッツァさんが軽いノリで陽気に手を振ってくれて、助かった。
「すみません、アスター殿下。勝手にお会いして」
「いや……それは構わない」
そう言ってくださったのはありがたいけど、やっぱりなんだか気まずい雰囲気だ。
「あ、そうそう!アスター、見てみろよ」
「いてっ!」
ピッツァさんがアスター王子の顔を無理やり横に向かせる……今、ゴキッと不自然な音がしませんでしたか?
「ミリィがソニアの手を握って話しかけたら、ソニアが涙を流したんだよ!」
ピッツァさんの言葉に、アスター王子は目を見開く。やっぱり半信半疑だったようで、ベッドのソニア妃に歩み寄ると……その場でしゃがみ込む。
まじまじと御母上様の顔を眺めたアスター王子は、唇を震わせ両手で顔を覆った。
きっと、色々な感情が渦巻いてるんだろう。15年、5歳から毎日、毎日。なんの変化もない御母上様を見てきて……ようやく訪れた微かな変化。
どれほど待ちわびてきたか。わたしにはきっと理解しきれない。でも、わたしは嬉しい。アスター王子の喜びが伝わってきたから。
彼が喜んでくれた、それだから嬉しかった。