【電子書籍化決定】婚約破棄から始まる悪役令嬢の焦れったい恋愛事情
これ以上、考えても仕方ないとルビーが居る中庭にダッシュする。
ジュリエットの記憶を頼りに必死に足を動かした。

そして、斧の代わりにマルクルスを連れて中庭に突入しようとした時だった。


ーーーーボスッ!!


鈍い音と共に何か柔らかいものに顔が埋まる。
潰れた鼻を摩りながら顔を上げると、そこには目を丸くした端正な顔立ちをした王子様が立っていた。
咄嗟の癖のようなものか……口から飛び出たのはまさかの挨拶だった。


「ご、ご機嫌よう、ベルジェ殿下……!!」

「……ご機嫌よう、ジュリエット嬢」


あまりの神々しいイケメン具合に目が眩む。
どうやらルビーとの顔合わせはマルクルスと口論をして追いかけっこをしているうちに終わってしまったようだ。


「ーー待てッ!!ジュリエット!!君は僕のことを世界で一番愛して、いると言って、いただろう、がっ!!」


体力が無くなったのか荒く息を吐き出し、左右に揺れて小走りで此方に近づいて来るマルクルスを見て、嫌悪感から体を強張らせた。
そして無意識にベルジェにしがみつくようにして力を込めていた。
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