【電子書籍化決定】婚約破棄から始まる悪役令嬢の焦れったい恋愛事情
「っ……!」

「ジュリエット、一体どうしたの?」

「ルビーお姉様、助けて下さいッ!!」


ひょっこりと可愛らしい姿でベルジェの背後から登場したルビーはジュリエットに名前を呼ばれたからか、嬉しそうに微笑んでいるが今はそれどころではない。


「ーーール、ルビー様!?」

「ご機嫌よう、マルクルス様」

「ルビー様は今日もとてもお美しい……!女神だ」


ルビーよりも先に挨拶をしなければならない人が居るような気がするのだが、彼の目にはベルジェは見えていないのだろう。

ルビーが視界に入った瞬間、面白いくらいにマルクルスの態度が変わる。
こうして見るとマルクルスのルビーへの態度は、かなり分かり易いものがある。
ジュリエットはそんな姿を信じないようにしたかったのだろうか。
それとも見ないふりをしていたのか。

取り敢えずはルビーにマルクルスの事を訴えかけて、この場を乗りきらなければならない。


「二人とも何をしていたの……?まさか喧嘩?」

「っ、そんな事ありませんよ!」

「でもジュリエットは"助けて"と……」

「この僕がルビー様の大切な妹を傷つけることなど有り得ませんよ!ははっ」


どうやらマルクルスはルビーの前では紳士な男を演じていたようだ。
ジュリエットを大切にすると、ルビーの機嫌が良くなることを知っていたのだろう。


「さぁ、行こう……ジュリエット。向こうでゆっくりと話そうか」

「嫌よッ!!」

「ジュリエット、ルビー様を困らせてはいけないよ」

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