【電子書籍化決定】婚約破棄から始まる悪役令嬢の焦れったい恋愛事情
余計なことを言う前に、口を塞ぎたいのだろう。
手首を掴まれて腕を引かれた為、ベルジェに助けを求めるように服を掴みながら必死に踏ん張っていた。
「ーールビーお姉様、聞いて下さいッ!マルクルス様は先程、わたくしと婚約したのはルビーお姉様に近付く為だって言ったんです!!!最低のクズ野郎なんです!!」
「え……!?」
「なっ……違います」
「許せませんッ!今すぐに婚約を解消したいのです!手伝って下さい」
「…………」
「…………」
「え……?」
ベルジェは何故だか分からないが、かなりショックを受けているようで「ガーン」という声がここまで聞こえてくるようだ。
少なからず同情が得られると思っていたのだが、何故かルビーは口元を押さえながらチラリと確認するようにベルジェに視線を送った。
二人の反応が予想外すぎて困惑していた。
(あれ……言ってること、おかしくないよね?)
本日、二回目の不安に襲われたところでマルクルスの低い声が耳に届く。
「ルビー様の前で貴様……ッ!」
マルクルスはルビーの前でキャラが崩れる事は避けたいようで、怒りからか手に力が篭る。
それを見逃さなかった。
「私には二番目になれと言ったんですよ!?だからっ、マルクルス様と婚約を解消したいと言ったら迫られて、追いかけられたんです……!」
「……!?」
「とても怖くて、私……!」
「嘘だッ!ジュリエットが僕を愛していないと訳の分からないことを言い出したから話し合おうと思っただけなんです!!」