【電子書籍化決定】婚約破棄から始まる悪役令嬢の焦れったい恋愛事情
「あの…………ベルジェ、殿下?」
「今の話を聞いて……大体の状況は把握した。あとは私が話をつけよう……」
「へ…………?」
「ジュリエット嬢の悪いようにはならない。安心してくれ」
ルビーに動いてもらおうと思っていたが、まさかのベルジェが庇ってくれた事に驚いていた。
(何故、ベルジェ殿下が……?)
初対面の相手に任せていいのだろうかと迷ったが、拗れる前にベルジェが動いてくれるのなら、これ以上心強い事はないだろう。
「……あの、ありがとうございます」
「あぁ……」
流石にベルジェの存在に気が付いたのか、マルクルスは借りてきた猫のように大人しくなった。
しかしそんなマルクルスに追い討ちを掛ける予想外の出来事が起こる。
そこにはマルクルスをじっと睨みつけているルビーの姿があった。
いつもよりずっと低い声がルビーの唇から漏れた。
「マルクルス様……」
「な、何でしょう……!!ルビー様」
「わたくしの大切な妹を悲しませるなんて……最低ですわ」
「ーーー!!」
「二度とお顔を拝見したくありません」
「ッ……!」
聖母のような笑みを浮かべながら猛毒を吐いたルビーの言葉を聞いたマルクルスは、絶望したのかその場で膝から崩れ落ちた。
ジュリエットがあれだけ言っても反論ばかりしていたのに、ルビーのたった一言でコレである。
(…………コイツ)