【電子書籍化決定】婚約破棄から始まる悪役令嬢の焦れったい恋愛事情
ニコニコと笑うだけで歓声が起きるような美貌を持ったルビーは様々な呼び名があった。
『ジークサイドの宝石』『天から舞い降りた天使』『美の化身』『女神』
幼い頃はそんなルビーを心から尊敬して憧れていた事もあった。

美しいものに喩えられて、皆から愛される姉の姿を見ながら育ったジュリエットは自分もこうなりたいと強く思っていたし、自分もそうなれると信じていた。

『お姉様が世界で一番大好き』『お姉様はわたくしの自慢よ』

そんな言葉をジュリエットは毎日毎日、言っていた。
恐らく絵本に出てくるお姫様を「可愛い」と言う感覚だろうか。
小さい頃はいつも仲が良くて、ずっと姉の後ろにくっついて回っていたジュリエットを、ルビーもそれはそれは可愛がってくれていた。


「ジュリエット、ありがとう」

「可愛いお姉様が大好き……!」

「わたくしも、貴女が大好きよ」

「私もお姉様みたいになれるかな?」

「……ジュリエットには幸せになって欲しいわ」

「私……?お姉様は幸せにならないの?」

「わたくしは…………ジュリエットが幸せならいいのよ」


まだ何も知らなくて、何も考えなくて済んだあの頃は、全てが輝いて見えていた。
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